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ファスト&スロー【読んだよ】

書評

ファスト&スロー (上)

ファスト&スロー (上)

ファスト&スロー (下)

ファスト&スロー (下)

オススメされてるだけあっていい本ではあった。上下とあるので長いよ。感想も引用も長い。

例えばあなたが7つの数字を見せられ、これを1分か2分覚えているように、と言われたとしよう。しかも、数字を覚えてことが最優先事項だ、申し渡されたとする。こうしてあなたが数字に注意を集中してるところに、2種類のデザートからお好きな方をどうぞと、言い渡されたらどうだろう。片方はいかにもカロリーのたかそうなチョコレートケーキ、もう一方はあっさりしたフルーツサラダである。この実験から、頭が数字でいっぱいの時には誘惑の大きいチョコレートケーキを選ぶ確率が高いことが確認された。システム2が忙殺されているときには、システム1が大きな影響力を持つようになる。そしてシステム1は甘党なのである。

ここでいうシステム1が速い思考であり、システム2が遅い思考である。

  • システム1は自動的に高速で働き、努力はまったく不要、必要であってもわずかである。また、自分のほうからコントロールしている感覚は一切ない。
  • システム2は、複雑な計算など頭を使わなければできない困難な知的活動にしかるべき注意を割り当てる。システム2の働きは、代理、選択、集中などの主観的経験と関連付けれらることが多い。

認知的に忙しい状態では、利己的な選択をしやすく、挑発的な言葉遣いをしやすく、社会的な状況について表面的な判断しやすいことも確かめられている。頭の中で数字を覚えて繰り返してることに忙殺されて、システム2が行動ににらみを効かせられなくなるためだ。もちろん、認知的負荷だけがセルフコントロール低下の原因ではない。睡眠不足や少々の飲酒も同様の効果をもたらす。朝方の人のセルフコントロールは夜になるとゆるむ。夜型の人逆になる。今やっていることがうまくいくだろうか心配しすぎると実際に出来が悪くなることがある。これは余計な心配で短期記憶に負担をかけるからだ。結論ははっきりしている。セルフコントロールには注意と努力が必要だということである。だからこそ思考や行動をコントロールシステム2の仕事になっているのである。

消耗が判断力に及ぼす悪影響を調べた実験の結果が、最近「米国科学アカデミー紀要」で発表された。イスラエルで行われた実験で、そうと知らずに被験者になったのは、8人の仮釈放判定人である。彼らは一日中、仮釈放申請書類の審査をしている。書類は順不同で提出され、審査にかける時間は平均6分という短さである。(中略)実験では決定に要した時間とともに、判定に与えられた3回の食事休憩、すなわち朝、昼、午後の休憩時間も記録された。そして休憩後の経過時間と許可件数の比率を算出したところ、各休憩直後の許可率が最も高く、65%の申請が認められた。その後は次の休憩まで2時間ほどの間に比率は一貫して下がっていきm次の休憩直前にはゼロ近くになった。

これは好ましくない傾向ですね、と。

認知しやすい快楽

発音しやすい言葉も好感度が高い。株式公開直後1週間は発音しやすい名前の会社のほうが、そうでない会社よりも株価が上がる。

「モーゼは何組の動物を箱舟に乗せたか」

この質問のまちがいに気づく人は、極めて少ない。このためこの質問は「モーゼの錯覚」名付けられている。

私もわかりませんでした(笑)何組ぐらいなんだろ?と真剣に考えてしまいましたね。みなさんは分かりますか?

フリッツ・ハインダーとマリアンヌ・ジンメルの動画

はこれですね。

www.youtube.com

大きな三角が攻撃的で、小さいな三角、丸をいじめている、ように見える。こういう印象はシステム1によってもたらされる。自閉症の被験者はこういう感じを抱かないらしい。

意識して疑ってかかることは、システム1のレパートリーには入っていない。

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上記、Bも13も実は同じ文字?なのだが、たった1つの解釈しか頭には浮かばない。

ハロー効果

さてあなたは次の二人の人物のうちどちらが好きだろうか?

  • アラン: 頭がいい、勤勉、直情的、批判的、頑固、嫉妬深い
  • ベン :嫉妬深い、頑固、批判的、直情的、勤勉、頭がいい

何も考えずに受けた印象だと、私もアランのほうが好ましく感じた。二人の違いが分かるだろうか?

質問の置き換え

難しい質問に対してすぐには満足な答えが出せないとき、システム1はもとの質問に関連する簡単な質問を見つけて、それに答える。もともと答えるべき質問を「ターゲット質問」、代わりに答える簡単な質問を「ヒューリスティック質問」と呼ぶことにする。

心理学は教えられるか?

人助け実験、結果を予測するのが難しい。結果と概要を話しても「ビデオで見てあんな感じのよい人たちは、すぐさま助けに行ったに違いない」「自分自身(および友人知人)はそういうことをしない」として、何も知らない場合と予測は変わらなかった。 が、ビデオに出てきた二人の人物はどちらも助けに行かなかった、と伝えると実験結果を極めて正確に予測した。 驚くべき統計的事実を示しても何も学ばない。だが驚くべき事例(あんなに感じのよい二人が助けに行かなかった)には反応し、ただちにそれを一般化して、人助けは自分たちが考えていたより難しいのだと推論することができた。

平均への回帰

褒めても叱っても結果は同じ。全くの偶然や難易度が高すぎることは、不出来だったあとはよくなるし、上出来だったあとまずくなる。平均へと回帰するからなのだ。

  • 上手くいった時に褒める→次は上手くいかないことが多いので褒めてもしょうがない
  • 不出来な時に叱る→次は上手くいくことが多いので、叱ると良い効果があるように思える

  • 非常に頭のいい女性は、自分より頭の悪い男性と結婚する

上記も平均への回帰だと分かるだろうか?

後知恵の社会コスト

中央情報局(CIA)は2001年7月10日にアルカイダがアメリカに対して大規模な攻撃を計画しているらしいとの情報を入手した。テネット長官はこの情報をジョージ・W・ブッシュ大統領に報告しなかった。ただし、国家安全保障問題担当顧問のコンドリーザ・ライス大統領補佐官には伝えた。事後になってこの事実が判明するとワシントン・ポスト紙の伝説的な編集長ベン・ブラッドリーは、「歴史を変えるような情報を入手した場合には、ただちに大統領にも伝えるのが基本中の基本だと私には思える」といったものである。だが、7・10の時点では、この断片的な情報が歴史を変えることなど誰も知らなかったし知る由もなかった。

直感vsアルゴリズム

ドーズは複雑な統計的アルゴリズムにさほど付加価値がないことに気づいた。役立ちそうな予測因子をいくつか選び、比較評価ができるように数値を調整するだけで、同程度の遅くができる。

例として下記の方程式があげられています。

  • セックスの回数 - 喧嘩の回数

これがマイナスになると離婚の危機。分かりやすいですね。

計画の錯誤

リスクを伴うプロジェクトの結果を予測するときに、意思決定者はあっけなく計画の錯誤を犯す。錯誤に囚われると、利益、コスト、確率を合理的に勘案せず、非現実的な楽観主義に基づいて決定を下すことになる。利益や恩恵を過大評価してコストを過小評価し、成功のシナリオばかり思い描いて、ミスや計算違いの可能性は見落とす。その結果、客観的に見れば予算内あるいは納期的に収まりそうもないプロジェクト、予想収益を達成できそうもないプロジェクト、それどころか感性もおぼつかないプロジェクトに邁進することになっていまう。

非現実的な楽観主義に基づいてプロジェクトの意思決定をしてしまう。。これは耳が痛いですね。陥りがちな錯誤ではないでしょうか。これの対策は、本書からいけば、

  • 経験に基づく意見、統計から得られた客観的な数値をバイアスなしに勘案する

ということでしょうか。

楽観主義

楽天家が私たちの生活で果たす役割は、普通の人と比べてはるかに大きい。彼らの決定は大きな変化をもたらす。彼らは発明家であり、起業家であり、政治や軍の指導者であって、そこらの人間とはちがう。彼らがその地位に就いたのは、自ら困難を探し、リスクをとったからである。

普段の行動から逸脱した行動を起こすには、結果に対しての後悔を軽く見積もれる人=楽天家、であることが非常に有利に働く。リスクを取った行動を起こす回数が多いのだから、成功する確率も高いだろう。Be positive!

が、もちろん会社などで行き過ぎた楽観主義があると、上記の計画の錯誤を起こす懸念が高まる。

死亡前死因分析

組織であれば、楽観主義をうまく抑えられるかもしれない。また個人の集団よりは、一人の個人のほうが抑えやすいだろう。(中略)何か重要な決定に立ち至ったとき、まだそれを正式に公表しないうちに、その決定をよく知っている人たちに集まってもらう。そして、「いまが1年後だと想像してください。私たちは、さきほど決めた計画を実行しました。すると大失敗に終わりました。どんなふうに失敗したのか、5〜10分でその経過を簡単にまとめてください」と頼む。くらいはこの方法を「死亡前死因分析(premortem)と名付けている。

このような会議が行えれば、まさに経験が生きるところ、客観的に決断しうる場となることだろう。

死亡前死因分析には、大きなメリットが2つある。1つは、決定の方向性がはっきりしてくると多くのチームは集団思考に陥りがちになるが、それを克服できることである。もう1つは、事情をよく知っている人の想像力を望ましい方向に解放できることである。

チームがある決定に収束するにつれ、その方向性に対する疑念は次第に表明しにくくなり、しまいにはチームやリーダーに対する忠誠心の欠如とみなされるようになる。とりわけリーダーが、無思慮に自分の意向を明らかにした場合がそうだ。こうして会議的な見方が排除されると、集団内に自信過剰が生まれ、その決定の支持者だけが声高に意見を言うようになる。死亡前死因分析のよいところは、懐疑的な見方に正統性(引用注:正当じゃないか?)を与えることだ。さらに、その決定の支持者にも、それまで見落としていた要因がありうると考えさせる効果がある。

楽観主義からプロジェクトを救うことができる手法として非常に効果的ではないだろうか。これはやってみたい。本書ではこう記されている。

「われわれは死亡前死因分析をやるべきだと思う。そうすれば、われわれが見落としていたリスクに誰かが気づくかもしれない

マイナスの優位性

嫌悪感にくわしい心理学者のポール・ロジンは、サクランボが山盛りになった器にゴキブリが1匹いただけで台無しだが、ゴキブリがいっぱいのバケツにサクランボが一粒混じっても何の感情も引き起こさない、と指摘する。ロジンの言う通り、いろいろな意味でマイナスはプラスを圧倒するのであって、損失回避も、そうした一般的なマイナスの優位性の一種と言うことができる。

リスクを伴う決定を統合的に扱う

プロスペクト理論でよくあるやつ

決定1 次のいずれかを選んでください。
A 確実に240ドルもらう。
B 25%の確率で1000ドルもらえるが、75%の確率で何ももらえない

決定2 次のいずれかを選んでください
C 確実に750ドル失う
D 75%の確率で1000ドル払うが、25%の確率で何も失わない

これらを選択すると、人はA、Dを選びがち、というのはプロスペクト理論の代表的な話だが、上の二つの決定を同時に行え、と言われた場合もA、Dを選択してしまう。 B、Cを選択した場合のほうが、A,Dを選択したときよりも期待値を上回る。 視点を高く持って選択しなくては、間違いを犯してしまう。本書では広いフレーミングと呼んでいる。

デフォルトの選択肢と、デフォルトから乖離した行動

デフォルトから離れた行動をとって悪い結果が出た場合には、ひどく苦痛を味わうことになる。たとえば株を持っているときのデフォルト選択は売らないことであり、朝同僚に出会ったときのデフォルト選択は挨拶することである。株を売ったり、朝同僚を無視したりするのは、どちらもデフォルトからの乖離であり、後悔や非難の対象になりうる。

非常に腑に落ちる話である。勇気ある行動!というのもまさにこういうことではないか。普通に行動するのが楽なのは間違いないが、そこから逸脱した行動を行うのは痛みが伴う。そこを超えて行動するものが勇者なのだ。

ファスト&スロー、いい本だった。これは本棚行き。